6人が本棚に入れています
本棚に追加
ランチタイム最終となる一週間は
珈琲か紅茶を無料でサービスした。
感謝の気持ちを込めてクッキーを添える。
常連の女性たちは感嘆の声を上げた。
俺へのカードやプレゼントをくれた。
この2年間、頑張ってきてよかった。
涙を見せないよう、かなり努力を要した。
「みんな、優しいね」
きっぱり首を横に振る麻衣ちゃん。
「違うし。店長がニブ過ぎるってば」
頭を抱え込む奈々ちゃん。
「今まで鉄壁に徹した私の努力が泡に!」
「ん?鉄壁?奈々ちゃんが?」
「はぁー!!」
最後まで当店の女性は容赦ない。
◇◇◇◇◇
今では当店の常連客に変わった麻衣ちゃん
一児の母になって、しっかりしてきた。
奈々ちゃんは取引先の責任者だと言って
1人の女性を連れてきて紹介した。
「初めまして。久代です」
俺は後輩と運命の再会を果たした。
髪は落ち着いたダークブラウンに染め
コンタクトから華奢な眼鏡にしたらしい。
オフィスカジュアルな服装は控えめで
相変わらず、朗らかな笑顔を向けた。
……俺のこと、わからないのかよ?
不貞腐れた俺は、ぺこりと頭を下げて
自分の名前記載のない名刺を差し出した。
最初のコメントを投稿しよう!