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姫良が訊ねたとたん、紘斗はため息をつくように笑ったかと思うと顔を歪め、それを隠すようにうつむいた。
そして、やはり顔を隠すためだろう、姫良を抱きしめる。
ブーケがぺちゃんこにならないよう姫良は慌てて躰から離した。
「いつ、思いだした?」
「このまえ熱が出たとき」
「おれの猫、キラっていう」
「だと思った」
紘斗の躰が小さくふるえているのは笑っているせいか、それとも――。
「さみしくない。おまえは?」
「さみしくない」
きついほど掻き抱く腕のなかで姫良はその言葉を咬みしめた。
その腕の強さはきっと紘斗のなかの激情を表している。
だんだんと弛(タユ)んでいった。
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