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二十歳の誕生日を思い浮かべてみると、確かに姫良が最初に目を向けたとき、視線が合って――
ということは紘斗の目はすでに姫良にあったことになる。
「じゃあ、声かけたのはわたし。強引に名刺もらわなかったらいまこうなってなかった。紘斗は迷惑そうだったし」
「おまえが声かけなくても、こうなってなかったとは限らない。姫良がミザロヂーの常連だってことは知ってたから」
埒の明かない応酬に、たまらず姫良はくすくすと笑いだす。
その無邪気な様子は、ともすればすぐ泣きそうになっていた七歳の姫良がやっと見せてくれた笑顔を思い起こさせる。
そうしたときに連なって思いだすのは、タクシーに乗って手を振り続ける姫良だ。
手を放すべきじゃなかったという後悔は紘斗に衝動を生む。
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