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「何すんだよ!」
その手を振り払おうと振り返ると、今度はネクタイを掴まれ、グイッと、とも姉のほうに引き寄せられた。
「ふむ…」
とも姉は俺に顔を近づけて、じろじろと見てくる。
「…もしかして、これは…イケるかもしれないな…」
その目はまるで捕らぬ狸の皮算用でもしているようだった。
「…は?何が?」
「そういえば、あんたがまだチビガキだった頃、よく女の子の格好をさせて遊んでたよなぁ…。あんまりにも似合ってるから楽しくってさー」
「嫌な事を思い出させるなよ…」
俺は顔を顰めた。
小学校ぐらいの頃まで、俺はとも姉に逆らえないまま、無理やり女の格好をさせられては遊ばれていた。
「あんた、顔の造りは良いし、女装すればなかなかイイ線いくと思う。
というわけで、お前をここで雇ってやろう」
「……何が、というわけで、だ!
てか、雇わなくていいから!」
冗談じゃない。
と言っても理屈が通じる相手ではないことは、昔からよくよく知っているので、そそくさと逃げようと…
「逃がさねーぞ」
とも姉は目にも止まらぬ速さで俺の頭を脇に抱え込んだ。
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