6人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「君が今日入ったばかりという新入りちゃん?」
「は…はい…」
いきなり若い男の客に声をかけられ、俺は慌てて高めの声で返事する。
「へぇ。
美人だし、スタイルいいし、もしかしてモデルとかやってるの?」
「いえ。何も…」
笑顔が強張る。
食器を下げて戻ってくると、とも姉に足を踏まれた。
「もっと普通に笑えよ」
「無茶言うな。男に美人とか言われても怖気しか走らんわ」
「あ、銀子ちゃん。
あなたに指名が入ったよ」
俺と同じくホールのアルバイトをしている女の子が声をかけてきた。
ちなみに俺の名前はここでは『銀子』ということになっている。
「指名?」
「そ。あの女の子が」
そう言って指差す先には、隅のテーブルでコーヒーをすする黒姫が居た。
「……え?」
…黒姫が…俺を…指名…?
「じゃあ、あとはよろしくね」
どういうことか問い返す間もなく、彼女は仕事に戻っていってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!