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「あの…。
そういえばなぜ…私を指名してくれたんですか?」
そう訊ねると、黒姫はまたも顔を赤くして視線をそらす。
「綺麗だったから」
「え?」
「私、可愛い女の子や、綺麗な女の子が好きだから…」
その言葉にはまるで頭をガンッと思いっきり殴られたような衝撃があった。
「女の子が…好き…?」
「ああ。
特にあんたみたいなタイプがすごく…いいかも…」
黒姫は照れたように目を伏せる。
その姿は俺が知っていた『喧嘩上等』の黒姫とは真反対で、まるで――恋する乙女だった。
「やっぱり私は変…だよな…」
「う…いや…そ、そんなこともない、と思うよ?」
と言いながら、受けたばかりのショックから立ち直れない。
黒姫は女の子が好きだった…。
そんな馬鹿な、と否定したいが、そうだとすれば今まで見てきた黒姫の行動の全てに合点がいく。
男子に対する容赦ない暴力。一人で毎日通い詰めるメイド喫茶。誰にも理解されない苦しみ。寂しげな目…。
それから、黒姫と何を話し、どんなやり取りをしたのか、覚えていない。
いつの間にか黒姫からの指名タイムは終了し、一日目のバイトも終了した。
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