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「あの…」
帰り際に黒姫は何かのチケットらしきものを差し出してきた。
「これ、知り合いに何枚かもらったから…良かったらその…一緒に行かないか?」
見ると、それはスーパー銭湯の割引券のようだった。
「……え?」
「…私…銀子ともっと仲良くなりたいと言うか…その…裸の付き合いもしてみたい、と言うか…」
あの喧嘩上等、暴力万歳の黒姫が、恥ずかしそうにもじもじしながらそんなことを口にする。
今まで少し浮かれていた俺は、この状況に至り、ようやく自分がドツボに嵌まりつつあることを自覚した。
「いや…その…それは…」
「明日とか空いてる?空いてるよね?さっき明日何しようかなぁとか話してたし」
俺はさっきまでのお喋りの中でうっかりそう口を滑らせてしまった自分を呪った。
「じゃあ、明日、朝の九時に駅前で!それじゃあ!」
恥ずかしさに耐えかねたのか、黒姫はそそくさとお金をテーブルに置いて、店を出ていった。
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