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決闘が始まって数秒後、俺は黒沢にぶっ飛ばされ、地面に突っ伏していた。
口の中に広がる血の味…そして、
「なぁ、白川よぅ」
黒沢は倒れ伏す俺の肩の上に足を置き、容赦なくグリグリと踏みにじってくる。
「私はブラックコーヒーが大好きなんだ」
…知っている。
その漆黒の長い髪と瞳と相まって、彼女が通称『黒姫』と呼ばれている所以だ。
「だが甘いカフェオレは大嫌いだ」
そう言うと、傍にいた舎弟らしき野郎から受け取ったカフェオレの缶を開け、俺の顔の上にぶっかけてきた。
「貴様みたいな甘っちょろい考えの男も大嫌いだ。私が女だと思って油断したか?あん?」
「う…ぶぼ…」
カフェオレの海に溺れそうになる。
「…少しは期待していたのに。がっかりだ…」
そう言い捨て、空っぽになった缶を放り捨てる。
カンカンッと缶が地面を転がっていく音が耳に届いた。
カフェオレの味を舐めながら目だけを上向けると、黒沢と目が合った。
その漆黒の瞳はぞくりとするほど冷たく孤高でいて…寂しかった。
俺はその彼女の瞳から目を離すことができなかった。
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