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「おりゃぁ!!こりゃっ、まっこと…」
それ以上の言葉が出ないのか、男は歓喜にも似た声をあげて、海へと走った。
今度は、俺が男の背を追う。
「凄いぜよ!!オンシっ、オンシもよう見るがや!!わははっ!!!なんじゃこの景色はぁ!!!最高やきぃ!!!!!」
「ああ…」
そう言うのが、やっとだった。
胸のあたりを鷲掴みされて、激しく揺すぶられたような。
この感覚、前にも感じたことがある。いや、それ以上だ。
まるで、心を…魂を洗浄されているかのようだった。
「儂には、未練があるきぃ」
不意に、男が言った。
「未練?」
言葉を口にした瞬間、ドクンと胸が高鳴るのが分かった。
全身の血が、活発に流動する。
「あの海の向こうの大国を、旅したいがじゃ!!そんで、異国にも負けん艦隊を作り上げ、国を守る!!弱いもんも、強いもんも、誰もが笑って暮らせる世を作りたいがじゃ!!」
作りたい……か。
作りたかった…とは言わないんだな。
そうか、そうなんだ。
男はまだ、生きてるんだ。
男の魂は、今もなお輝き続けているんだ。
ーーーーー 死んでいないんだーーーーー
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