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「斎藤さん、うちの馬鹿兄貴がいつもすみません」
そう言うと、斎藤さんは俯いたまま微かに首を横に振った。
「兄貴?いま兄貴って言った?
兄上様じゃないのが残念だけど、それもまた然りってね。ねぇ、もう一度呼んでみなよ」
「バッ、誰が呼ぶか!誰のせいだと思ってんだ!」
言葉のあやに決まってんだろ!
お前なんか宗次郎で十分だ!!
「……」
「あ、すいません耳元で。煩かったですよね…?」
あれ、なんか心なし柔らかいような……って、待て待て待て。
俺に断じてそんな趣味はない!
斎藤さんが女顔ってだけだ!!
「ーーーおや、全員集合とは…。ちょうどいい」
「山南さん……井上さんも」
「やぁ。土方くんが何やら話があるそうなんだよ。悪いけど、部屋まで来てはくれないかぃ?」
いつもと変わらない温厚コンビ。
声色こそ優しいけど、今日は少し張りつめている。
まるで、何か強い気持ちを押さえ込んでいるかのように。
何か、あったんだろうか。
俺たちは頷くと、疎らに歩き出した。
もう、誰も喋るものは居なかった。
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