転生

8/10
前へ
/33ページ
次へ
ーーー 「京に向かう」 眼前にいる男は、はっきりとそう言った。 広いとは言えない部屋の一室で、俺たちは確かにその言葉を聞いた。 何故とも、分かったとも…言葉に出すものはいなかった。 皆、若先生の…近藤さんの言葉を待っていた。 「……」 ここにいる連中はみんな、近藤さんの人望に寄って集まった者たち。 何をするにも、どこに行くにしても、近藤さんと共にありたい。 何故か、自然とそう思うのだ。 特に宗次郎は、人一倍その思いが強い。 それは、誰の目から見ても分かるほどに。 何が宗次郎にそうさせるのか、誰にもわからないけれど。 止める術があるとも、思わなかった。 そして、止めなかったことを後悔する日が来るなんて事も…。 近藤さんは、黙ったまま。 時間ばかりが過ぎていく。 緊張感。 ただそれだけが、部屋を占めている。 俺の息遣いは次第に浅く、速くなっていた。 やがて 「ーーー行こう」 近藤さんは、すべてを覚悟した眼でそう言った。 力強い、俺たちの大将の言葉だった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加