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「人は死んだ後、何処に行くんだ?」
「なんじゃ、謎かけか?」
「真逆。純粋な疑問さ」
俺は死んだ。男も死んだ。
では、今の俺はなんだ?目の前にいる男は、一体何なんだ?
「分からんのぉ…儂は、曖昧なことは嫌いじゃ。曖昧なもんは答えられん。目で見たことしか信じん。真実しか話せん。昔からそうじゃ」
「……」
同感だった。
俺も、他人の言動に合わせるのは性分に合わない。
何を信じるか、何が正しいか、何が本当か。
全ては、自分の手の内に決定権があるんだ。
「ええが!!!死んだ今、その答えを知る絶好の機会を得たっちゅうわけじゃからのぉ!!」
「“真相は今まさに、我の手中にあらん”か。いいね、嫌いじゃない」
男は鼻息荒く頷いて、拳を天に振り上げた。
また、風が吹く。
無言の中でも、俺たちの歩調は一切緩まなかった。
俺も、男も…来た道を振り返ることはなかった。
そしてついに、俺たちは海へとたどり着いた。
エメラルドグリーンとほ違う、光の反射で七色に光る美しい海だった。
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