苦い香り

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 明宏兄さんは、社会人五年目の27歳、独身。  マンションで一人暮らしをしている。  毎週のように土曜か日曜入り浸っている私は、勿論、彼のことが好きだ。  likeではなく、LOVEの意味で。  きょろきょろと辺りを見渡す。  ガラステーブルの上には、マグカップと黒い灰皿。  マグカップは明宏兄さんのものであり、灰皿には、彼がいつも吸っている銘柄の吸い殻のみ。  テレビの前に飾られてある写真も、友人や家族と一緒に写ってあるものだけ。  キッチンに目を向けるが、ペアカップのようなものはなさそうだ。 “よし! まだ彼女はいなさそうだ”  小さくガッツポーズをすると、香ばしい芳醇な香りが鼻を掠め、背後からクスクスと笑い声が聞こえた。
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