苦い香り

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「さ、コーヒーが入ったから一緒に飲もう」  カップを受け取ると、彼は私の頭を撫でて、横に腰を下ろした。  シャツの胸ポケットからシガレットケースを取り出し、煙草を一本摘まむ。  男性なのに節のない細く長い指が色っぽい。  口に咥えた煙草に火を点けて、ゆっくりと吸い込む動作が大人の男性といった雰囲気で、その横顔に見惚れる。 「ん? どうした?」  紫煙をくゆらせる彼が、ふいにこちらに振り向くと、微かに爽やかでクールなグリーンノートの香りが、彼の口から放たれたコーヒーと煙草の香りと溶け合い、混ざり合い、セクシーさを膨らませる。  あぁ。  やっぱり好きだな。  彼の仕草も声も。  それに、香りも。
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