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女は澄ました猫のように通りを観察している
俺を見ようともしない
今日のスーツは
特に女受けの良いスーツなんたが…
この女は俺を見ようともしない
面白くない
大抵の女は
俺の顔を見て
俺のスーツを見て
俺の持ち物をチェックして
もう一度俺の顔を
うっとりと見るものだ
なのに
この女は
まだ通りを観察し続けている
益々面白くない
目線を手元の本に戻し
耳で周囲を窺っていると
甘いオンナの声が聞こえた
「ここ?」
「ああ。俺の行き着け」
「オシャレぇ~」
声に出すな
声に
カッコ悪いだろ。
男も女も
バカすぎる
バカな二人を見てやろうと
本から視線を動かすと
猫女もバカの方を見ている
はぁ。
俺よりも興味があったってことか?
ちょっと凹む
バカップルは手と手を絡め
二人の世界に旅立っている
なんちゅーバカ具合
カタッ。
音がした
ハッとみると
猫女がサングラスを外しテーブルに置いたようだ
どれどれ?
女の顔を覗き見ると
結構好み
サングラスを取っても美人だな
強い眼差しで
バカップルを睨みつけている
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