プロローグ

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この頃、暑さで目を覚ます。 腹にだけかけたタオルケットをどけて立ち上がり、カーテンを開けると暑い日差しが狭い部屋に降り注ぐ。 梅雨の明けた夏の暑さは好きではない。けれどいつか行った東京の夏はここよりもずっと湿気がひどかった、なんて考えながら洗面所へ行き洗顔をする。 リビングに行くとじいちゃんの姿は見当たらない。朝の散歩にでも行っているのだろう。 俺、早川輝明は狭い田舎に祖父と二人で住んでいる。小さい頃に両親を亡くし、それからはずっとじいちゃんと一緒だ。 俺は両親がまだこの世にいたときからじいちゃん子で、ばあちゃんを病気で亡くし独り身になったじいちゃんと二人きりで住むことは苦じゃなかった。 けれど高校生くらいからじいちゃんの体調が優れない日が多くなって、毎日が心配の連続だった。 今は病院からもらった薬のおかげで朝の散歩に行けるほどの体に回復したが、薬は増えていくばかり。 それでも心配せざるを得なくて、大学を卒業したあとはじいちゃんが何十年も前から同じ場所で経営している本屋の手伝いをしている。 手伝いと言ってもほとんど俺が店番をしているのだが。
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