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私服に着替えて朝食を食べ、適当なテレビ番組をつける。世間はすっかり夏休みモードらしい。どうりで蝉がうるさいわけだ。
これじゃ外でタバコを吸うのもすっきりしないな、と湿っぽい気持ちになる。
携帯の電源ボタンを押して画面を見ると、開店時間である十時が近づいていた。
男二人だけが住んでいる家は二階が住宅、その下は店になっていて、家を出てすぐにある階段を降りると「はやかわ書店」の赤い看板文字が掲げられたまともな書店になる。
年季の入った重いシャッターと昔から変わらない手動ドアを順に開け、主に雑誌を置く商品棚を店内から外に取り出し、それからいつものように開店準備をしていると、隣家の前に引っ越し業者のトラックが止まるのが見えた。
ここの隣に家族が引っ越してくるという噂を耳にしていたが、どうやらそれは事実だったようだ。
トラックに続くように一台のファミリーカーが止まると、父母らしき男女と、背は高いがおそらく高校生くらいのすらっとした、いわゆるイケメン少年が降りてきた。
少年は自分たちの様子を見つめる俺に向かって微笑を浮かべつつ軽く会釈をすると、トラックのほうへ歩き去っていった。
俺は特に何も気に留めず開店準備の続きを進める。
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