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ガシャン!
鉄の分厚い扉が締められた。
ヒソヒソ話と高笑いが、
階段を降りるコツコツという音と共に遠ざかる。
ミフネは無言のまま、
全身の力が抜けきった様子だ。
首を動かす事も出来ず、
僅かに動くのは、指先だけ。
瞬きをするのも精一杯であった。
そこは、無機質なコンクリートの壁。
電気と呼べるものは、無く。
真っ暗闇だ。
あるのは、
30cm程の鉄格子の付いた換気口の様な窓口。
ガラスなど付いていない。
天井に近い部分に取り付けられていた。
しかし、そんな暗闇の中、
不思議な事に、穏やかな灯りが差し込んでいた。
それは、今にも堕ちてきそうな、大きなお月様。
ミフネは心の中で呟く。
(今宵は満月か……かぐや姫でも降りてきて 酌して貰えば絵にもなる)
すると夜月に一瞬何かが横切ったのが見えた。
(なんだ?今のは?)
ミフネは失われて行く意識の中で、
夜月を飛行する、何かを目撃した……。
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