食わず嫌い

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「加奈子、どうした?」 大根を食べ終えた男がスマートフォンに小声で話し出した。 「ああ、覚えているよ。明日は朝早くから綾の発表会だって。接待もう直ぐ終わるから。ああ、わかった」 通話を終えると、男は自分の酒を一気に飲み干した。 「ただいまー。大根冷めちゃった?」 男の横に座った椎名さんから、僅かにメンソールの香りがした。 「いただきまーす」 「美希」 「なあに、修二さん」 「悪い、直ぐに帰らないといけなくなった」 「………」 横目で見た椎名さんの顔は少し拗ねてて可愛い。 「今度はゆっくりするから、なっ?」 「わかった。約束ね」 椎名さんは、少し上目遣いの綺麗な顔に甘えるような微笑みを浮かべた。 男は名残惜しそうに椎名さんの頭を撫でて、店の外へ出て行った。
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