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「……さっき、いい夢を見たの」
今と同じような感覚だった。
暖かな胸に抱かれて、大切にされてたんだ。
「久しぶりに、お父さんが来てくれてたみたい」
「孫のために禁煙しろって言いに来たのかな?」
「まだお母さんにも言ってないのに?」
「天国は何でもお見通しなんだろ。お母さんには、後で電話しような。まだ朝早いから」
「そうだね」
まだわずかな萌(きざ)ししか見えないこの子も、きっとこうやって包んでもらえたのだろう。
閉め忘れた窓から、朝日が射し込んでいる。
明るすぎて霞む光は、天へと帰る幽かな煙のように見えた。
― 了 ―
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