煙のむこう側

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サークル棟の裏門側出口。 学食の一号館側の通路。 中庭の丸池のベンチ。 そこにもいなかったら――、あとは五号館の裏庭。 ――ほら、やっぱり。 声を掛けるのが勿体無くて、無防備な背中に見惚れる。 いつも暗い色ばかり身につけてる背中が、今日はライトブルーのシャツに包まれていて、それがカノジョの趣味じゃないといいなと思う。 「先輩っ」 スキップするように弾みをつけて、左隣に滑り込む。 「おう、びっくりした」 へへっと笑って、どうしようもない後輩のふりをする。
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