煙のむこう側

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「やめとけよ、俺タバコ吸うオンナ好きじゃないし」 「……」 こんなとき、絶対目が合わない。 先輩の視線を奪う煙が羨ましい。 私も吐き出したら、追ってもらえるのかな。 吐き出せないものならいっぱい、胸の底に沈んでるよ。 ふいに風が動いて、数人の声とヒール音が響く。 「あ、……おい」 「またね」 ようやく見てもらっても、その頃には私が背を向けている。 ずっと離れた場所からそっと振り返ると、とっくに火を消した先輩も背を向けていた。 カールした茶色の長い髪を揺らしたきれいな人に向かって、先輩が笑う。
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