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「参ったな、こいつも……」
何かを告げる声で意識がはっきりした。
僕はどうしてここに居るのだろう。
体を思う様に動かせない。
軋む身に鞭打って、何とか声の主を見た。
黒い衣服の相手は既に背を向けていて、剃り上げた頭が見えるだけで顔はうかがい知れない。
今もなお呟き、離れて行く声の質から若い男性とは分かるのだが。
「全く、早くしなければならないな」
早くとは何の事だろうか。それでも置かれた状況から不味いくらいの判断は付く。
兎に角コイツから離れなくてはと焦燥が湧いた。
誰かは分からないが、コイツは危ないと。
だけれど身体が言う事を聞かない。
アイツが向こうに行っている間にと思うのに、無様に軋んで指先すら自由に動かせない。
もがいて必死に動こうと苦戦していると男がこちらに戻って来た。
「おいおい、勝手に動くなよ」
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