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「終わった」
盛大なため息とともに飛び出てきた言葉。
周囲の乗客が、何事かと一瞬振り向くも、すぐに知らぬ顔をする。
うん、だろうね。
うん、それが当然の反応だよ。
これでもか!ってぐらいにオシャレして、海外に勉強に行く彼を見送りにいくはずが、まさかまさか。
『羽田空港』へ行くはずが、乗り換えの『京急蒲田』を大きく通り越して、『成田空港』まで行ってたんだから。
いくらスマホ忘れたからって、途中で気付け!って話よね。
はぁ~、
『あぁ、離れ離れになる前に、せめて、ちゃんと告白しよう』
とか考えてたら、全然寝れなかったのがいけなかった。
その代償に、電車内でヨダレ垂らして寝たうえでの寝過ごし。
しかも、『品川』で気付けばさ。
まだ笑い話で終わったのに、どこをどう間違えたのか、『成田空港』に行くとかね。
ありえないよね。
すでに彼が乗る飛行機の搭乗時間は過ぎ、自動的に不戦敗が決定した私は、『エアポート快特』から『快特』を乗り継いで、来た道をトボトボと戻る車中の敗残兵。
時間が経って、お化粧というメッキが剥がれた私など、見る価値すらない。
いや、むしろ、見てはいけないシロモノだ。
『次は、京急川崎、京急川崎です。大師線お乗り換え……』
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