エアポート快特 三崎口行

5/11
前へ
/11ページ
次へ
臨海地区らしい工場地帯と、住宅街。 ちょっと歪な車窓が窓の外に広がる中、私の心も、歪な形のまま。 『後悔先に立たず』 よく言ったもので、コクって玉砕なら、ワンワン泣いたと思う。 一週間は家から出ないかもしれない。 でも、それだけしたら、赤く腫れた目を晒しながらも、また学生生活に戻って、新しい恋でも見つけられたかもしれない。 その機会を永遠に失った私は、泣いて忘れることも、新しい気持ちになることも出来ず、引き摺るばかり。 きっと、日常生活に支障はない。 支障はないが、心にはポッカリと大きな穴が空いて、私なのに、私じゃない。 そんな日々が続くのだろう。 それは、いつまで? いつ帰ってくるか分からない彼が戻るまで? 戻るとき、彼の横には違う人がいるかもなのに? そもそも、戻らないかもなのに? 「あ、ぶるーすかいとれいんだ!」 どこかで子供が歓声をあげる。 赤い列車に混じる、青い列車。 快晴の大空のような爽やかなカラーリングの電車に、子供は夢を映すのだろうか? 残念ながら、土砂降りな私の目には、何も映らない。 ただ、心がブルーなだけ。 『次は、横浜、横浜です』
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加