中毒者

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 別に吸うなと言っているわけではない。われわれは、無休で壊れるまでシャカリキに働き続ける機械ではないので、適度な休憩は必要である。だが、物事には節度というものがある。  軽食を摂って一服。一仕事を終えてまた一服。就業前のラストスパート前にこれまた一服。  愛煙家というものはとかく物事の節目節目に一服をつけたくなるものである。それは十二分に理解しているつもりである。ただ、彼の場合は少し目に余る。まるで、頻尿の男がトイレに駆け込むみたいに、椎名は喫煙室へと赴くのである。  そんなことを考え出したら苛立ちによって作業の手が止まってしまう。一度、気にし始めると注意力が散漫になるまで気にしてしまうのが私の性質なのである。最新のデスクトップも扱い手がこの有様では、単なる箱と化してしまう。我慢の限界だった。私は二本目のボトルコーヒーをぐびりと飲み干すと、部長室へと飛び込んだ。 「また君かね」  部長はたいして驚いた素振りも見せず、息巻いて椎名の問題行動を訴える私の話にじっと耳を傾けるとそれだけ言ってうつむいてしまった。私が部長室で椎名の問題行動を直談判するのは、これが初めてのことではない。初めてのことではないが、こんなそっけない仕打ちはあんまりだ。
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