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「でももしアマデウスの死がただの不運な事故だったとしても、自分の死のせいで誰かが無実の罪に着せられていることを知ったら、天国で嘆いているはずだよ。彼の死の真相を暴いて、みんなに知らせることもまたファンの役目だ!」
「僕はそうは思わないけど」
むしろアマデウスが本当にそんなところにいたとしたら、今頃腹を抱えて大笑いしていることだろう。だが、恋する乙女というのは盲目なものらしい。
そのとき、僕の名を呼びこちらに向かって教師が走ってきた。教師は一瞬、僕の隣にいる大和に目をやってから、差し迫った口調で告げた。
「嵐がやってきてすぐ、峠で土砂崩れがあったらしい。すまないが、道が復旧するまでバスは出られないそうだ」
「土砂崩れですか?」
もしこの世に神さまがいるとすれば、よほどハプニングが好きらしい!
教師は僕の表情からひどい悲しみを感じ取ったのか、彼が悪いわけでもないだろうに、申し訳なそうに何度も謝った。そして雨が止むまでの間、僕と客人は学院で過ごす権利が認められていることを話した。
学院から一番近くのふもとの町までは、一本の私道があるだけだった。バスは普通、外出許可の出る週末にだけ走り、町に繰り出す生徒たちによっていっぱいになる。学院から町までは、人の足では半日以上かかり、つまりその道が寸断されているということは、学院から一歩も外に出られないということだ。
「どこかへ出かける予定だったのに、それが駄目になったの?」
教師が足早に立ち去ったあと、大和が僕の顔を見上げた。
「故郷の親戚の具合がよくないという知らせがあって、迎えに来たいとこと一緒に帰るところだったんだ」
臨時のバスを用意してもらえるはずだったが、それが駄目になってしまったのだ。
「それは心配だね」
大和はしおらしく俯いていたが、ふたたび顔を上げたときにはその目をキラキラと輝いていた。
「じゃあ、雨が止むまであなたは暇ってこと!?」
「あ、いや……」
だが、大和は僕の返事を聞く前に、前に立って走り出した。
「おい、僕は協力するなんて一言も言ってないぞ!?」
あわてて大和の背中に向かって叫んだが、歓声を上げて走り出した少年の耳には届いていないようだった。
こうして僕は、降りしきる雨の中、この奇妙な探偵ごっこに付き合う羽目になったのだった。
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