喫茶 玉

6/20
前へ
/22ページ
次へ
「お前は本当に顔に出るな」 すっと換気扇の下へと移動して煙草をふかす。 不機嫌そうな表情は標準装備だが、それに慣れてくると隠れた変化が読みとれるようになる。 今のは呆れたような笑だ。 「素直で可愛いのはここだけだよ」 真っ直ぐ見つめて言えば、しかめっ面が返される。 「…っ」 珠利が何かを言おうとして口を開けかけたのと同時に、カラカラと引戸が鳴った。 「いらっしゃいませ」 全然いらっしゃいませな感じじゃない声につい、顔が引きつってしまう。 「愛想無さすぎだよ」 ボソッと呟いた言葉に、無言で睨まれる。 開かれた扉からは、世話好きそうなおばちゃんが入ってきた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加