-水間(みなま)に散らした華-

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 頭部に銃弾を受けた衝撃で記憶と未来視を失った赤谷沙希は、これから先も知ることなく光の下を生きていくのだろう。  自分のために地下に沈んだ一人の青年がいたということを。 「……赤谷沙希の身柄確保と、搬送先の指示。  俺がやるべきことは、終わりました。  向こうも片付いたようですし、俺は一足早く、本庁に戻ります」  小さく息をついて物思いを断ち切った沙烏は、身を翻すと止められた公用車に向かって足を進め始める。  1年ぶりに外へ出てきたというのに、地下へ戻ろうとするその足取りに躊躇いはなかった。  ……願うことさえも、罪なのだろうか  その背中を見るともなしに見つめながら、龍樹は柄にもなく思った。  ……消えてしまった記憶の向こうに、欠けてしまった心のどこかに、彼女が抱いた想いが今も残っていますようにと思うことは  曖昧な色彩を飲み込もうとする茜空は、残酷なまでに赤くて。  その色は、1年前のあの日の空の色に、よく似ていた。 《 END 》
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