-水間(みなま)に散らした華-

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 この国には、他の国にはない機関がある。  国家人口管理局、通称『リコリス』  先の少子高齢化の反動で人口爆発が起きて、養い切れる以上の国民を抱えたこの国が作った姥捨山。  犯罪者、助かる手立てもない末期の病人、浮浪者、その他世間に『いらないモノ』と判断された者達は、『リコリス』の掃除人達によって片付けられていく。  それこそまるで路肩のゴミを掃除夫が拾っていくかのように、淡々と。 「っ、は……!! はぁ……っ!!」  その『リコリス』が敷いた厳戒態勢の中を、私は必死で走り抜けていた。  立入禁止区域に指定されたエリアを出歩く人影は、私以外には1つも見当たらない。  当の私だって、どうしてこんなに危ない真似をしているのか、理由は全く分かっていなかった。  ただ、予感がした。  この茜空の向こうに、大切な人がいると。  胸の中に広がったモヤモヤしたその予感は、私に足を止めることを許してはくれなかった。
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