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「沙希」
手を、伸ばす。
茜空の向こうにいる、彼に向かって。
「さようなら」
でもその手は、彼には届かなかった。
まるで思考がショートでも起こしたかのように、私の意識は突然闇に落ちた。
.・°・. 。.・°・. 。.・°・. 。.・°・. 。.・°・.
「お前には、この未来が視えていたんだな」
意識を失いくず折れた赤谷(あかや)沙希が、ストレッチャーに乗せられて救急搬送されていく。
その様を遠くから見つめる沙烏(さう)の傍らに並び、遠宮龍樹(とおみや・たつき)は声を上げた。
「この一年、あの地下室から出ようとしなかったお前が現場に出ると聞いて、何をしでかすのかと張り付いていたわけだが……
赤谷沙希が絡んでいたのか」
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