-水間(みなま)に散らした華-

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 赤谷沙希と、かつて『長谷久那(はせ・ひさな)』という名で暮らしていた沙烏は、幼馴染だった。  互いに淡く想いあっていたことも、龍樹は知っている。  だが二人は、ただ互いを想いあう平凡な高校生でいるには特殊すぎた。 「『予言者』沙烏。  その予言はすべて、赤谷沙希を生かすためだけに吐き出されているのだから」  赤谷沙希には、未来が視えた。  長谷久那にも、未来が見える。  沙希は超能力としての『未来視』で未来を視ることができ、沙烏は周囲の情報を分析処理することで予測としての未来を把握することができた。  情報屋・長谷家の筆頭として裏世界にも通じていた沙烏とは違い、沙希の未来視は突然発症したもの。  裏の掟を知らない沙希の未来視が、『リコリス』には邪魔だった。  だから1年前、赤谷沙希の名前が『リコリス』の片づけモノリストに載った。  その時沙希の元に派遣された掃除人が龍樹だ。
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