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よく通る声が、力強く響く。
「近くの秀善寺の者だな。随分と堕ちたものだ」
笠の下で、鋭い目が光る。僧侶とはとても思えない、獰猛な目だった。
三人は怖気づいた。覚えていろ、と無意味な言葉を吐きながら、走っていってしまった。
「あ……、ありがとうございます」
戸惑いながら、蓮は頭を下げた。
旅の途中らしい大柄の彼は、くい、と笠を下へ引いて、彼女を見る。
「堕落僧を見過ごせないのです」
そう言って、ひらりと向きを変える。彼女に答える隙を与えずに、足早に行ってしまった。
(まさか、僧侶に助けられるなんて)
複雑な気持ちで、黒一色の背中を見送る。
彼の右手には、僧侶に似つかわしくない鉄製の杖が握られていた。
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