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都はいつも有り余る賑やかさだったが、肝心の大王は弱っていた。
というのも、各地の豪族が力をつけ始めていたからだ。
特に有力だったのが、嶺倉氏(みねくらし)である。祖父の代から、自らが大王にならんとしていた。
ちょうどその頃、大陸から新たな宗教が入ってきていた。嶺倉氏は、これを使わない手はない、と考えた。
元々豪族は、昔から尊道(そんとう)の神を祀っていた。流処大尊(りゅうかのおおみこと)と、その他七柱の尊である。
そして、大王は最高神である流処大尊の子孫とされていた。
尊道が廃れれば、当然大王も衰える。嶺倉氏は、そう考えたのだ。
大きな都の一番奥。そこに大王の住まう宮殿はあった。
立派な屋敷がいくつも建ち並び、多くの召し使いが動き回り、権力者が贅の限りを尽くす。
梅が紅白の花を咲かせ、蛍が池や草の上を飛び交い、楓が燃えるように赤い葉を落とし、雪が白一色で包み込む。
華やかな衣の男女は、そんな季節の移り変わりと色恋を重ねて、歌を詠んだ。
一般庶民の誰もが羨(うらや)む、夢のように雅(みやび)やかな世界。
しかし、それは上辺だけになりつつあった。豪族の力が、日増しに大きくなってきていた。
「はあ……」
額に手を当て、鳳徳王(ほうとくおう)は溜め息をついた。
「どうなさいました?」
後ろから、妻である水柳比売(みずやなぎひめ)が尋ねる。
鳳徳王はいらいらした調子で答えた。少し耳障りな甲高い声が響く。
「嶺倉氏め、また一つ寺を建ておった」
その言葉に、水柳比売も険しい顔をする。
鳳徳王は続けた。
「奴に習って、他の豪族達も寺を建て始めるし。一体、大王家はどうなるのじゃ」
大陸から入ってきた宗教を、当時の人は新教と呼んだ。
新教を広めるため、嶺倉氏は次々と寺を建てた。
大陸に対する憧れもあり、各地の豪族も競って建て始めた。
お陰で今や、全国に寺がそびえる。
かつての絶対的存在だった尊道は、見る影もなかった。
「命(みこと)は、まだ見つからぬのですか?」
隣に座り、静かに尋ねる。
「いや」
彼は、首を横に振った。
「ずっと北の加羅立国(からたちくに)で、命らしき女の情報を得た」
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