1 カフェにいる彼女

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 彼女は今日も来ていた。  いつもの場所、天井まで届く窓ガラス前のカウンター席の一番はしっこ。  ブルーのハードカバーの厚い本を華奢な両手で支え、白い横顔は熱心に文字を追っている。くるんとカールしたまつ毛が(せわ)しなく上下に動いているのがよくわかった。  軽くウエーブのかかった長い髪を高い位置で無造作に結えていて、おくれ毛が白いうなじをふんわり囲っている。  華奢な首筋が頼りなげで、俺の視線はついつい引き寄せられてしまう。  ――今日は、スカートだ……  いつも見かける彼女の服装は、ジーンズやアースカラーのゆったりしたパンツスタイルなどが多かったのに。というか、俺の記憶が正しければスカート姿はなかったはずだ。  このカフェに来るたび必ず彼女を見ているのだから断言できる。  表通りをバックに、大きなガラス窓の前に座った彼女に人光が差している。    そして、本当に今日の彼女ははっとするような美しさで、ニット素材のベージュのロングスカートが彼女のまとう雰囲気をよりいっそうやわらくしているから、意識して気を引き締めないと本来の目的を忘れて、ただボケーっと彼女の姿を見つめてしまいそうだった。  そうだ。俺は勉強するためにここに来ているんじゃないか。しかし……。  彼女のスカート姿がレアだからって、ついつい視線がカウンター席へと吸い寄せられてしまう。    いつもはもう少しおとなっぽい感じなのに、可愛らしく見えるのも問題なのだ。うん、可愛い。  なんだっけな、何て言うんだっけこういうの。「けしからん可愛さ」って感じか……。  おまたせしました。と、カウンターから店員の声が聞こえてはっと我に返った。
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