1 カフェにいる彼女

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 ――おっと、いかんいかん……  俺は彼女から視線を引き剥がし、注文するためにカウンターの前に立った。  背中では彼女の存在を意識しながら、けれどまったく気にしていない風を装い、俺は淡々と店員に告げた。 「ホットのカフェラテをトールで。あと、ホットサンドもお願いします」  このカフェに通い詰めるうち、何人かの店員とは顔見知りになってしまったから、「いつもの」で通りそうなものだけど。 「かしこまりました。カフェラテのトールとハムとチーズのホットサンドですね、いつもありがとうございます。○○円になります」  その中でも同年代の店員とは時々言葉を交わすことが増えていた。 「――どお、受験勉強はかどってる?」  丸顔の彼が親しげに声をかけてくれた。 「ええまあ。ぼちぼちです」  この1か月はほぼ毎日のように来ているから、カフェの店長とも何度か話したことがあるのだ。
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