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創立年数が浅く、比較的建物や施設はぴかぴかの大学は、学長の趣味で造ったそうだ。先輩から聞いた話によれば偏差値はあってないようなもので、学長と仲良くしてれば入れるらしい。
けれど、中高一貫のこの学校で、エスカレーター式に大学まで進んだ生徒は皆無だろう。
手元のカフェオレはとうに冷めていた。俺はアイスと化した液体を流し込む。
「藤好、がんばってるんだね。それで結局塾には行かなかったんでしょ?」
三関が斜め向かいから言った。
「……ああ。でも、正しい選択だったよ。今のペースが俺には合ってるみたいでさ。家や図書館より全然集中できる」
「カフェに通い詰めてるって聞いたけど、駅の近く?」
「駅から歩くには少し遠いかな。家からチャリで行ってる」
「ふうん」
久々に会ったコバやんは特に変化がなかったが、三関は髪が伸びていた。
肩先までのストレートヘアを濃いブラウンに染めているが、大人から見ても好印象の色味だろう。ヒトミさんとは真逆の色とスタイルに見える。
無意識に、目前の友人の姿にヒトミさんを重ねていたことに気付いた。
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