4 ヒトミさん

6/10
前へ
/36ページ
次へ
 ――いつものカフェじゃなくて、今この場所にヒトミさんがいたらどんなだろ……  きっと彼女なら、大きな目をぱちくりさせてこの広いカフェテリアを眺めて、「学生のくせに贅沢だね」とか言いそうだ。 「なんかさ」 「……ん?」 「追い込みの時期なのに、ずいぶんリラックスしてるわね。なんか、余裕って感じ?」  ドキッとした。頭の中をのぞかれた気分だった。    学校の友達とは性別関係なく付き合うほうだが、コバやんと三関の三人でいると、たまに感じることがある。  コバやんが「0」で三関が「8」だと。10段階で表した直感の鋭さだ。  よく「女は感が鋭い」なんて言うけれど、三関と話していると多々感じることがあったものだ。(但しコバやんは一切気づいていない) 「家に(こも)らないから、適度にリフレッシュできてるんだろうな。たまにチャリで遠回りしてから行ったりしてたし」 「そっか」  それ以上追及されないことに安堵する。できればあのカフェの場所も教えたくなかった。こいつらにヒトミさんのことを知られたりしたら、めんどくさいことになりそうだから。  
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加