4 ヒトミさん

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 コバやんと三関。    この2人とは中等部から顔見知りだったけど、高校に進学してからは3年間同じクラスで、気づけば、3人でつるむのが自然になっていた。  いわゆる「ツレ」と認知できる間柄だ。  中学の頃は、女子と男子のグループに分かれることが多いが、高校ではその線引きが曖昧になる。  携帯所持禁止の中学とは異なり、高校は色々と自由だった。  クラスではLINEのアカウントを作り、学校行事のたびにみんなで記念撮影してアップしては盛り上がった。  一応グループには分かれているものの、クラス全体の仲はよかったと思う。  その中で、俺とコバやんはどこのグループにも属さず、誰ともでもうまくやれるタイプだった。  女子ではめずらしく三関もそうだったから、自然と集まった三人なのだろう。  幸い三関はサバサバした性格だから、特に女子だと意識しないで済む。  ――まあ、俺は女子とも普通に話せるし……  なのに、カフェでヒトミさんと対面したときは何もしゃべれなかった。あんなことは過去になかった。  初めて、女の人を意識した。 「何が違うんだろうなあ……」 「は? 何がって、さっきから何をぶつぶつ言ってんのよ」  三関はルックスだけでいうなら、可愛い方だ。  クラスの情報通の女子によれば、他のクラスや他の学年の男子で三関を狙っているヤツが数人いるとか。  男っぽい性格だが、ヘアスタイルはいつも綺麗に整えられているし、通学バッグに可愛いマスコットもつけている。  三関の傍には大抵俺かコバやんがいるから、そのことを面白く思わない男子がいるのだろう。  クラスメートなら俺らのことをわかっているけど、  その逆パターンもある。  新入生が入ってしばらくすると、俺やコバやんのことを訊きに新1年生の女子が三関のところへやってくる。  特に女子は厄介だ。  晴れて高校に入学して彼氏を作る気満々の女子に、三関は特別に映る。ルックスだけは抜きん出ているコバやんと、そしてそこそこ見目がよく見える俺(自分ではよくわからないが)(クラスの女子談)の二人を、従えているように見えるらしい。  そういえば、コバやんと三関の三人で、恋バナみたいな話はしたことがなかった。卒業目の前のこの時期で今更なのだが。  まあ、コバやんは彼女がコロコロ変わる上に長続きしないから、毎回その話題が定番だった。  ――ちょっとしてみたかったよな、恋バナ……  するりと頭に浮かんだ台詞に、自分で驚く。  え? 恋バナ? 俺、恋バナしたかったのか?  ……誰の……? 「何をとぼけてるんだ」と、もう一人の俺の声が聞こえた。
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