4 ヒトミさん

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 コバやんの場合は、見た目に騙されて寄ってきた女子にコクられて、まず断らないから付き合い出して、数か月で振られるのがお決まりのパターン。  俺の場合は、ルックスに関してはコバやんより控えめだけど、大抵年上に見られるから(制服姿がコスプレみたいと揶揄されることもある)頼りがいがあるように勝手に思われたりする。(その点はラッキーだ)  結構マメな部分を評価してくれる女子もいて、それで好意を持たれることも多い。で、去年まで付き合ってた彼女は、向こうから接近してきてその流れで仲良くなって付き合って……というパターンだったか。  まあでも、過去に付き合った彼女は二人だから、数でいったらコバやんに圧倒的に負けている。  付き合った年数だけは負けないけれど。  なんかこれだとコバやんに負け通しみたいな気になってくるな……。 「ちょっと藤好(ふじよし)、さっきから何考えてんのよ。表情が面白いわよ」 「え? いや……。いろいろ思い返してたんだよ。この6年間をさ」  俺の台詞を受けて、三関が目を瞬かせる。 「そうよねえ、あたしたちって六年間だもんねえ。ここからみんなバラバラに外に出て行くのかと思うと、ちょっとしんみりしちゃうかも……」  三関は長いまつ毛を伏せて、感慨深げにつぶやく。普通にモテていたから、告白された経験は多いだろうなと思った。  いつも三人で何を話していたのかと問われれば、おそらくはくだらないことばかりだ。だから、俺たち三人で色恋云々について話したことなんかないはずだ。  ――こいつには、好きな男がいたんだろうか  俺は、頭に浮かんだ疑問をそのまま三関にぶつけてみた。 「三関ってさ、この三年間男っ気ないように見えたけど、付き合ったやつとか、いたりした?」  三関は俺と視線を合わせたまま、驚いた顔をする。何を訊かれたのかわかってないような、そんな表情だった。 「三関?」  視線もぼんやりして、いつものパキッとした三関らしからぬ様子に、こっちが驚く。 「……ば、ばかじゃないの。そんなこと女子に訊かないでよ!  デリカシーなさすぎ!」
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