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「はあ? なんだよ、俺そんなに変なこと訊いたか? 別に嫌なら答えてくれなくていいよ。ふと、そんな疑問が浮かんだだけだし。――今まで俺達そういう色恋話しなかったから、最後くらい聞いてみようかと思っただけだし」
三関はじっとり俺を睨むと、口を尖がらせて目を逸らしながらぶつぶつ言った。
「べ、別に嫌じゃないけど。何か変なんだもん、あたし達にそんな話題」
俺はつい、ぷっと吹き出した。
「はは、確かにな。ちょっとなんつーか、照れるよなー」
なんだか尻の辺りがむず痒くなって座り直した。
「そういうあんたはどうなのよ。藤好」
「俺?」
「あんたってば、高一で付き合い始めた彼女と、高ニの終わりに別れて以来彼女いないじゃない? コクられても断っちゃうしさ。あんたと木庭のことであたしが何度呼び出されたかわかってる? 『藤好くんと木庭くんに彼女はいるんですか? あなたがどちらかの彼女なんですか~』ってさ」
三関は誰かの物まねなのか、舌足らずな話し方で言う。
「ああ……すまん。いろいろ苦労かけたな」
「まったく、あんた達はあたしをもっと労わるべきよ。木庭なんか最悪。あいつ短期間で彼女をとっ替えひっ替えするから、そのときもあたしはホントに……」
本当に。三関が男なら問題なかったのだ。ただ、性格はサバサバしているとはいえ、誰が見てもルックスが良いからやっかみも多々あったようだ。
「悪かった! コバやんの分も謝らせてくれ。いや、卒業したら俺とコバやんでおごらせてくれ」
「約束だかんね、忘れないでよ! でも……まだあと二ケ月あるんだから、最後にとか卒業とか、別れのフレーズは言わないで」
三関の語尾が小さくなる。――その通りだった。
「あ……スイマセン」
「なんで敬語?」
視線の端に、コバやんの茶髪が入った。本人はスキップしてるつもりらしいが、まるっきりエサを貰って喜んでる動物園のゴリラみたいだ。
ただし、細マッチョなイケメンゴリラだが。
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