1 カフェにいる彼女

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 担任や教科担当の教師たちに相談して散々悩んで、そして自分で納得して出した結果だった。    両親は、塾に行かない俺を初めは心配していたが、毎朝きちんと起きてきちんと食事を摂り、決まった時間に勉強道具持参で出かけていく俺の姿に安心したようだった。  今は体調を気遣ってくるくらいで、その他のことは放って置いてくれる。  たとえ人と違う勉強法だったとしても俺にはこれが合っているし、本番までこのペースを変えるつもりはない。何より集中できるのだ。  俺はトレイを持っていつもの定位置へ向かった。  彼女とは対極の、奥の小さいテーブル席。透明の壁で仕切られた、喫煙席のすぐ脇だ。  バッグを椅子の上に置き、トレイをテーブルのぎりぎり端に置いて、ノートと参考書、ペンケースを取り出し並べる。  カフェラテを口に含む前に、まず参考書を広げて付箋をつけたページの復習を一通りする。  引っかかった部分を、ノートに書き留める。2~3分それをくり返し、ようやくカフェラテを飲むことができる。自分で決めた、小さなルールだ。  ふうと息を吐き、勉強のリズムを崩さないよう再びノートにシャーペンを走らせる。    この店内で流れる曲は落ち着いたインストゥルメンタルだから、集中するためにイヤホンで音楽を聴くこともしなくなった。  運悪く、近くの席にグループやカップルが座った日は集中が切れてしまうから、そんな時はイヤホンだけ耳に突っ込む。  
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