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……将来(さき)のことは、正直わからない。
独身の私に、パートのこの仕事はあまりにも不安定すぎるし、ネットで占い師をして、何とか二つの仕事で生活費を稼いでいる状態だ。
だけど、その収入だっていつ途絶えるかわからない。
ただ、この仕事は、教員の時と違って、私が私らしく働ける。
子どもと向き合い、子どもとの時間を楽しむことができる仕事なのだ。
「あ、入谷(いりや)さん。こんにちは」
そんなことを考えながらコーヒーを飲んでいると、開け放たれた入口から、軽い足音がして、バイトの子が入ってくる。
「こんにちは、マキちゃん」
「あ、いいもん飲んでますね~」
「ちょうど、お湯沸いているよ」
「わかりました。ご相伴に預かる代わりに、私はデザートを提供させてもらいます」
そう言いながら、靴を脱いで部屋に入って来たバイトの子は、鞄の中から焼きドーナツを取り出す。
私はそれを、ありがとう、と言いながら受け取った。
そうして私は今日も、子ども達が来る前に、戸棚にちょこんと鎮座しているインスタントコーヒーを、召還するのだ。
「元気」な子ども達が、今日も放課後を楽しく過ごせるよう、自分のエネルギーを補給するために。
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