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選んだコースには、アメリカから帰化したアフリカ系の教授がいた。巨体と濃い揉み上げが印象的だった。一部の学生達は彼を「大統領」などと呼んでいたが、おそらく人種差別の自覚もなかったと思う。
彼のクラスでペアワークをすることになった。周りと良好な関係を築くことを怠っていた僕は、中学生みたいにグループ作りの置いてきぼりを食いかけた。けれどもありがたいことに、僕みたいなのがもう一人いた。女だった。近付いてみるうちに容姿が分かってくる。スタイルよし、髪よし、目よし、鼻よし、口よし、輪郭よし……僕の理想を具現化したかのごとく美人だった。こんな人が浮いているのは奇跡、大当たりを引いたと思い、精神を落ち着かせつつ声をかけた。
「どうですか、一緒に」
彼女の目がこちらを向き、僕を認識する。
「あ、お願いします。ぜひ」
返事は早かった。内心軽くガッツポーズする。
「塩見といいます」
僕は名乗って手を差し出し、彼女と握手した。少し乾燥した肌だった。
「トキコです」
低過ぎずに低い、色気のある声が、柑橘系のシャンプーの匂いと共に漂ってくる。ハーフアップにした暗い茶髪だった。柔らかさを醸すベージュのセーターとジーンズが、輪郭をそのままに彼女を彩っている。やや吊り上がった二重の細目に捉えられると、そのシルエットが少し大きく見えた。
この美しい存在を手に入れたいと思った。自分のものにしてしまいたいと思った。
それが始まりである。
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