COCKPIT12070122

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(モニターA) 〈白色の床とドーム型天井に囲われた、五畳程度の部屋。モニタリングカメラから向かって左手、正面、右手それぞれに、壁地と同色の扉がある。中央の扉のノブが回る〉 〈男の低い声〉 『入りますよ』 〈中央の扉が開き、男が入ってくる。アフリカ系の皮膚、大柄、五十代半ば。縁なし眼鏡の両端の位置から、揉み上げが顎まで伸びている。白い作業服に身を包み、平らな黒いキャップを被っている。胸元には、黒地の楕円に「Space Center」の文字を蛍光させたロゴがある〉 〈男が流暢な日本語で言う〉 『足下に気を付けて』 〈男に続いて、子供を背負った女が入ってくる。色白、細身で小柄、三十前後。黒のショートヘアに黒縁眼鏡。男と色違いの橙色の作業服を着ている。女に背負われているのは女児で、痩せ細っている。六~七才。服はオレンジ色の子供サイズ。茶色の小さなニット帽を目深に被り、アイマスクを付けている〉 〈女が息を切らしながら、低い声で話す〉 『よいしょ。はー、はぁーあったかい。やっと着いた。下ろすよ、ミユキ』 〈女が、女児(以下、ミユキ)を壁際の床に下ろす〉 〈男が話す〉 『あぁ、ヤノさんすいません。私がおんぶしてあげればよかったですね』 〈女(以下、ヤノ)が笑顔で立ち上がり、ドアを閉めながら言う〉 『いえいえ! お気遣いどうも』 〈ミユキが身動きして顔を上げ、かすれた声で言う〉 『お母さん、着いた?』 〈ヤノが振り返る〉 『着いちゃったよぉう』 〈ミユキの前にしゃがみ、両頬を撫でる〉 『ミユキ、絶対驚くよ。いくよ……じゃーん!』 〈ミユキのアイマスクを取る〉 〈ミユキが部屋を見回す〉 『えっ、どこ? ここどこ?』 〈ヤノが表情を崩す〉 『どこでしょーうか?』 〈ミユキが床と壁を触る〉 『えー……もしかして』 〈驚きと喜びの表情になる〉 『スペースシャトル?』
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