華に春花を加えて

6/9
前へ
/9ページ
次へ
「うーん……熱はない、かな? 額当てでよく分からない……」 「っっっ……!!」  フワリと鼻先をかすめる、甘い香り。  身近に感じるやわらかな熱。  そのすべてに、玉砕した。 「これ! やるっ!!」  ガバッと依代から体を離し、懐に入れていた物を依代の髪に突き刺す。  それはもう、グサッと音がしそうな勢いで。 「イタッ!! えっ!? いきなり何っ!?」  衝撃によろめいた依代を支え、態勢が安定したことを確かめてからそそくさと距離を取る。  突然のことに目を白黒させる依代が頭に手を伸ばすと、新しく髪に添えられた髪飾りがチリンッと涼やかな音を立てた。  その音に気付いた依代がハッと髪飾りを探る。  だが乱暴に突き立てた髪飾りは摘んで結った髪の根元に刺さっていて、中々素直に抜けそうにない。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加