塩原 7

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「――……例えば、だ。詐欺事件のグループで顔を合わせたとか。そういった事情も、実行犯のリーダー的存在であろう西潟には把握できただろう」 「村口が受け子とかであれば、顔を合わせる時間もそんなには無い。――……覚えている可能性は低い、ですか」 塩原が後を続けると、聡子は明後日の方向を見やりながらうなづく。おそらく今フル回転しているのだろう。 「ヤツをもう少しつついてみろ。前科は無いと言っていたが、口をつぐんでいるだけかもしれん。西潟の名前は絶対に出すなよ」 塩原はうなづき、部屋から出ようとしたが、聡子が思い出したように引き留めた。 「――……塩原、もしかしたら、この三件の死体遺棄事件の実行犯も、同じ形だったのかもしれん」 「……係長?」 聡子の言う事がいまいち把握しきれず、塩原は聞き返した。 「殺人を犯す人間、死体を棄てる人間――……それぞれが複数いる可能性が高いが、そんな危険な事をしようとする人間が、そんな簡単に、しかも一気に集まると思うか?逮捕したヤツは、他の事件は一切知らないと言い切っているそうだし……ならば、同じように西潟が集めたという可能性もある」 「……じゃあ、そのサイトに引っかかった人間を使って、西潟が全て指示した、と……?」 あくまで想像だ。そう言って聡子は塩原を下げた。 塩原は再び取調室に戻る途中、スマホを取り出す。 だが、そうなると既にサイバー課の範疇になってくる。 サイトは無理だが、そういった情報が入りやすい人間に連絡をとってみようか。 そう考え、数人程に情報提供の依頼を送る。 こちらの状況を簡単に予想してくれる人達なので、余計な詮索をしてくれず、すぐに全員で情報を流してくれた。 『数か月前から、そういうサイトがあるってのは聞いた事があるよ』 『でも、経由が面倒くさいから、本気で金が必要な奴しか行かないんじゃない?』 『中身も結構危ないらしいって、のぞいた奴の知り合いが言ってたのを聞いたぞ。リスクが大きすぎるってよ』 『まあ、よほどのバカじゃなきゃ、乗らない話だよね』 塩原を通しての知り合いなのだが、お互いに質が似ているからか、割と交流があるらしく、今もメンバーが集まっていたようで一気に情報をくれた。 礼を言って終わると、塩原は村口にもう一度確認を取る。
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