塩原 7

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サイトの事だと思っていたらしい村口は、塩原から詐欺に関わっていると尋ねられるとただでさえ青い顔が色を失くし、今度は真っ白になった。 それだけで、返事をしたと同義だ。 再び取り調べが行われ、村口から裏が取れると、塩原は聡子に連絡を入れた。 『よくやった。サイバー課の方もサイトの痕跡を追っている最中だが、そちらの情報も入れておく。何か手がかりになるかもしれんしな』 聡子の賛辞に、思わず塩原は背筋を伸ばした。 そのまま一旦、村口の送検が行われるが、それは塩原が担当するようにと言われる。 『お前が初めて逮捕した容疑者だ。最後までやり遂げろ』 塩原はスマホを耳に当てたまま、勢いよく返事をし、近くを通った職員に不審気に見られた。 詳しくは沢渡に聞け、と指示され、塩原は取調室に戻る。 すると、村口が真っ白の顔のまま、ブツブツと何かを口にしている。 塩原が何事かと沢渡を見やると、苦笑いで返された。 「後悔してるんだとよ。だがな、そもそも人を傷つけて報酬をもらうという考えがおかしいんだ。楽をして手に入るものに価値などある訳が無ぇ」 沢渡は一蹴し、その言葉が聞こえただろう村口は、そのままうつむいて唇を噛んでいた。 「ともかく送検の準備始めるぞ。塩原、お前がやるんだろ」 「ハイ!お願いします!」 初めての事だらけだが、何だか自分の進歩を実感し、塩原は思わず握っていた拳に力が入った。 だが、気合いが空回りしないように深呼吸する。 ようやく刑事として、南條に近づけた気がする。 まだまだ自分と南條の間にはかなりの差があるのは分かっているが、かの子を間に挟んだ時に、それがどこか引け目になっているのは否定できないのだ。 塩原は沢渡に教えを乞いながらも、何とか村口の送検までたどり着けた。 聡子に報告を入れる頃には、既に日も傾き始めていた。 そのままかの子の方に連絡を入れようとして、塩原はようやく気がついた。 かの子の定時連絡メールが来ていない事に。 ――……え? 塩原はかの子専用フォルダの履歴を確認するが、今現在、何も連絡が入っていない。 焦って直接電話してみるが、マナーモードになっているのかどれだけコールを鳴らしても、かの子は出ない。 塩原は躊躇したが、南條に電話をかけた。
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