塩原 7

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いつだって、かの子が真っ先に寄り掛かるのは南條の方で。 ついに、塩原はくすぶっていた思いを口にした。 「――……あのさ……。……俺、そんなに頼りない?」 「え?」 不意打ちの質問に、かの子は顔を上げる。 その瞳には大粒の涙がたまったままだ。 塩原は顔だけをかの子に向け、そう尋ねた。 「俺は、かのちゃんの何なのかな」 かの子は口を開きかけ、躊躇する。 その繰り返しを何度か繰り返すと、そのまま塩原の元に直進し、ぶつかるように抱き着いた。 「……かのちゃん?」 「――……ごめんなさい。あたしのせいで、悠司さん傷つけて……」 違うよ、傷ついてなんかいないよ。 そう口に出す前に、かの子の唇が触れた。 目を見開く塩原に構わず、つたないながらも、かの子の唇は何度も離れては触れる。 「――……かのちゃん……」 わずかにできた空間で、塩原は息を吸い込み、かの子を呼ぶ。 涙目のまま、首元に抱き着くかの子を、塩原はようやく抱き留められた。 「あたし、悠司さんが好き」 「え」 「こうやってキスできるのは、悠司さんだけだもん。……これって、好きって事で良いんだよね?」 あまりに不意打ちの告白に、塩原は固まる。 その反応に、かの子が不安そうにのぞき込む。 「……もう、遅い……?」 塩原はゆっくりと首を横に振った。 そして、自分から深く口づけると、一旦かの子を離す。 「……全然……!」 気持ちが昂ったせいか、一筋だけ、塩原の目から涙がこぼれた。 かの子はそれを見て、目を見開く。 「あ、いや、気にしないで。……何だろ……」 急いで塩原はそれを手でこすろうとするが、かの子がその手を取り、自分の指先でそっと触れた。 「――……かのちゃん……」 「ありがと……悠司さん……。――……待っててくれて……」 はにかみながら、目を伏せるかの子を、塩原はそっとベッドに横にする。 ああ、もうダメだ。 かの子の全てがほしい。 そのまま気が遠くなるほどに口づけを交わすと、そのまま塩原は、恐る恐る、かの子のカーディガンを抜き取った。 ワンピースの肩ひもを下げ、下に着ていたカットソーの中にそっと手を入れる。 一瞬だけビクリとしたが、かの子は抵抗しない。
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