塩原 7

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『お前にも、かのちゃんが落ち着いていたら、こっちに来てもらいたいのだが……どうだ』 「……分かりました。大丈夫だと思います」 塩原は通話を終えると、後片付けをしていたかの子に声をかけた。 「係長に呼ばれたけど……出ても大丈夫?」 「あ、うん。気にしないで、大丈夫だから」 振り返って塩原を見上げるかの子の表情には、先程までの暗さや怯えは見当たらない。 とりあえずは大丈夫だろうと、塩原はうなづいた。 「いつ戻れるか分かんないけど、成島の意識が戻り次第、一回は病院に行かないとなんだ。かのちゃん、東裕美に会うつもりなら、その時は一緒に行こうか」 「……うん……。……裕美さん、大丈夫かな……」 視線を落としたかの子は、手にもっていた布巾を握りしめた。 塩原はかの子のそばまで行くと、その体をそっと抱き寄せる。 「……大丈夫だと思いたいよね。向こうには野澤巡査部長もいるし……南條さんが説得したんなら、最悪にはなってないんじゃないかな」 かの子は曖昧にうなづく。 塩原はその頭を軽く撫でて、離れた。 「じゃあ、余裕があったらメールするから。定時連絡は忘れないでね」 「う……うん……」 玄関で靴を履きながら言うと、かの子は遠慮がちに塩原のスーツの袖を引っ張った。 「かのちゃん?」 「……気をつけてね……」 精一杯の言葉をふり絞ったのか、かの子の顔がうっすらと赤い。 塩原は口元を上げると、軽くかの子に口づけた。 「ゆっ……」 「行ってきます、かのちゃん」 かの子との距離が一気に縮まった気がして、署にたどり着くまで、塩原の心は今までで一番明るかった。
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